『下妻物語』で桃子が憧れたロココとは?
『下妻物語』は絶妙なダサさがクセになる面白い映画ですよね。
(※ネタバレを含みます。ご注意下さい。)
『下妻物語』とは
田園風景が広がる美しい茨城県下妻市。青空の下フリフリのロリータ・ファッションで闊歩する少女・桃子(深田恭子)の生きがいはお洋服。ロリータ一直線で他人を必要としない桃子の前に、真っピンクの改造原付きに乗った地元のヤンキー少女(土屋アンナ)が現れる。
シネマトゥデイ

2004年に公開された中島哲也監督の作品です。
茨城県の下妻を舞台に、ロリータファッションに身を包む竜ヶ崎桃子(深田恭子)と、レディースの一員である白百合イチゴ(土屋アンナ)が繰り広げるドタバタコメディ。
日本だけでなく、海外でも『Kamikaze Girls』(神風ガールズ)というタイトルで一時評判となりました。
桃子はロココの精神を大切にしている
桃子が軽トラにはねられるという衝撃の冒頭シーンで、「できれば私はロココ時代のおフランスで生まれたかった」というセリフがあります。桃子はロココについて「人生なんて甘いお菓子とおんなじ。スイートな夢の世界に溺れる。溺れまくる。それがロココの心なのです」と語ります。

ロココは、桃子のファッション、ひいては人生に大きな影響を与えているようですね。いったいロココとはどんな文化なのでしょうか?
18世紀のフランス宮廷が発祥の文化
ルイ15世の愛妾だったポンパドゥール夫人が築き上げた宮廷サロンを基盤に、ヨーロッパ中に広がった様式です。かのマリー・アントワネットも特に好んだ文化です。
その特徴は、華々しく優美で、そして何より女性的なことが挙げられます。具体的には、豪華な装飾と丸みを帯びたデザインのインテリアや、柔らかい色遣いが使われた絵画、ロココスタイルと呼ばれるファッションなど。



ロココという言葉はロカイユに由来します。ロカイユとは貝殻や小石などをモチーフにした装飾の事で、ロココ調の家具や建築などにふんだんに使用されています。
バロックとの対比
同じ時期に登場した有名な文化・様式としてバロックという概念があります。
- バロックとは
16世紀末から17世紀初頭にかけイタリアのローマ、マントヴァ、ヴェネツィア、フィレンツェで誕生し、ヨーロッパの大部分へと急速に広まった美術・文化の様式である。
Wikipedia

バロックは迫力のある構図や、強烈な対比、誇張された動きなどが特徴で、しばしばロココと対比されています。
正確にはロココより以前とされる文化ですが、同じヨーロッパでこうも正反対の文化が生まれるというのは興味深いですね。バロックは男性的な文化、ロココは女性的な文化と分け隔てられています。
その特徴から軽視されることも
桃子が「評論家たちはこの時代の芸術を、甘ったるくて安易で化粧ぽっくて下品。淫ら。とこき下ろします」と言っていたように、ロココは軽んじられる事が多い文化です。というのも、フランス貴族文化の最盛期で、チャラチャラした貴族の優雅な生活を基盤にしているからです。
ロココを代表する画家であるフラゴナールの作品などは軒並み評判が悪く、少し可哀想になってしまうほど・・・

バロックが宗教的なメッセージ性の強い作風だったので、それと比べてしまうと、確かにロココは軽薄に感じてしまいますね。実際に、ロココの次に起こった新古典主義は、クラシックで上品な路線に修正されています。
現在でもロココ調の家具は人気
西洋アンティーク家具の中で、ロココ調の家具の人気は非常に高くなっています。フランス貴族文化の華やかなデザインは、やはり女性にウケが良いようです。

女性的で可愛らしいデザインですよね。ロココ調の家具を一つお部屋に取り入れれば、一気に女子力がアップすること間違いなし。
ロココ調ファッションが後世に与えた影響

ロココを語るにあたって、ファッションに言及しないわけにはいきません。ロココ文化が後のファッションに与えた功績は大きく、西洋服装史においては大きなターニングポイントとして取り上げられています。
それまで、服装はあくまで機能重視。ロココ文化が花開くと、服装はファッションに、さらに芸術へと高められます。ウエストを極限まで締め上げるコルセットや、巨大なカツラなどは、あまりにも異色で、それまでのファッションの考え方を根本的に変えてしまったのです。

後半は、もう訳が分からないようなファッションも登場しますが、フランスが世界のファッションリーダーの地位を不動にしているのは、このロココ文化のおかげなのです。
そして、日本においてロリータファッションとしてアレンジされ、親しまれているのですね。ロリータファッションを愛する桃子のような人は、現在でもロココの精神を受け継ぎ、お茶会や刺繍を楽しんでいるのです。