映画『ブルーに生まれついて』から知るジャズ界における「ブルー」(青色)の意味

2015年公開作『ブルーに生まれついて』感想など

ジャスとブルーの関係性について考えるきかっけとなったのはこの映画でした。

2015年 アメリカ、カナダ、イギリス

監督:ロバート・バッドロー

出演:イーサン・ホーク カルメン・イジョゴ カラム・キース・レニー スティーヴン・マクハティ ジャネット=レイン・グリーン トニー・ナッポ

あらすじ

名ジャズ・トランペット奏者として一世を風靡した、チェット・ベイカーの苦闘の時代を描くドラマ。ドラッグに依存し、暴行されて歯を失い、どん底に落ちたチェットが再生を目指す姿を、イーサン・ホークが見事に再現する。シャープな映像とクールな音楽が抜群の官能をもたらす1本。

(Firmarks)

鑑賞後レビュー(※ネタバレ含みます)

横暴な態度、ドラッグ依存、激しい女性関係。このクズ男の唯一の良心はトランペット。そして、このトランペットにかける情熱という一点のみで、見ている我々を味方につけてしまいます。

ジャズの世界で白人のチェットに対する風当たりは強いですが、もがき苦しみながらもトランペットを吹き続ける彼を優しく見守る目も多いようです。恋人ジェーン、旧知の友ディック、保護観察官までも。この人たちが手を差し伸べる度に、道を踏み外さずに済むチェット。そうでなければあっという間の転落人生でしょう。だから、ジェーンが一緒に行かないと言った時、悪い予感がしたんです。

そしてラスト、わずかな所作でそれを見抜き、涙するジェーン。この時、チェットはとても哀れな男に写ります。拍手喝采の中、ステージには1人の寂しい男が立っている物悲しい幕引きでした。

もちろん、ストーリーだけでなく劇中の演奏シーンも素晴らしく、これだけで見る価値が十分にあると思います。

ブルーに生まれついて (吹替版)

伝説のトランペット奏者チェット・ベイカーとは?

本作で描かれているチェット・ベイカー(本名Chesney Henry Baker Jr.)は1929-1988に活躍した伝説のジャズ奏者です。ウエストコースト・ジャズの代表的トランペット奏者であり、ヴォーカリストでもあります。

モダンジャズの世界では珍しい、白人のトランぺッターです。また中性的な歌声でも知られ、一時はあのマイルス・デイヴィスを凌ぐ人気がありました。

しかし、映画で描かれていたようにドラッグや暴行事件、乱れた女性関係など、破天荒な性格でも世間を賑わせた人物でもありました。服役経験もあり、出所後にもう一度トランペットを手に取りますが、鳴かず飛ばずで、結局返り咲きとはならず。

チェット・ベイカーは58歳の若さで亡くなっています。ホテルの窓からの転落死と報じられていますが、原因は明らかになっていません。トラブルに巻き込まれることも多いような人物だったので、事件性もあったのではないかと思われます。

ドキュメンタリー映画『レッツ・ゲスト・ロスト』(1988年製作)について

天才的なトランぺッターではありましたが、私生活では様々な問題を抱えていたチェット・ベイカー。その波乱万丈の人生は映画の題材としてはうってつけです。

今作よりも前に『レッツ・ゲスト・ロスト』というドキュメンタリー映画が公開されています。

解説

88年、アムステルダムのホテルの窓から転落死したジャズ・ミュージシャン、チェット・ベイカーの生涯を描くドキュメンタリー映画。エグゼクティヴ・プロデューサーはナン・ブッシュ、製作・監督はファッション・キャメラマンのブルース・ウェーバー、撮影はジェフ・プレイス、編集はアンジェロ・コラオが担当。作品は、デビュー当時から最近までのベイカーの写真をモンタージュしながら、レコーディング・セッションする彼の姿を捉え、またインタビューによって彼の私生活にまで立ち入り、アーティストとして、また人間としてのチェット・ベイカーの姿を浮き彫りにしようというもの。

映画.com

1988年から撮影された本作は、製作途中でチェットが亡くなったので、彼の死後に公開された作品になります。伝記的な映画としてチェット・ベイカーを描く作品は、今作が初めてとなるわけですね。

ジャズ界ではカリスマ的な人気を持つ彼の伝記映画。チェット・ベイカーについてもっと知りたい方はこちらをどうぞ。

『ブルー』はなにを指すのか?

本題です。

上記で紹介した『ブルーに生まれついて』。ブルーに生まれつくとは、いったいどういう意味でしょうか?

一般的にブルーには「憂鬱」といったようなイメージがあります。おしゃれなイメージのあるジャズと「憂鬱」は結び付かないような気もしますが、あながち関係ないものでもありません。

もともとジャズは1920~1940年にニューオリンズにて発祥したとされています。人種差別が今よりずっと酷い時代に黒人文化として発展してきたわけです。こういった背景をふまえると、どことなく悲しみを背負っている音楽に聞こえますよね。

現にジャズに多用される音階は、ブルー・ノート・スケールと呼ばれています。

ブルー・ノート・スケール(ブルース・スケール、blue note scale)は、ジャズやブルースなどで使われる、メジャー・スケール(長音階)に、その第3音、第5音、第7音を半音下げた音を加えて用いるもの、もしくはマイナー・ペンタトニック・スケールに♭5の音を加えたものである。特に、♭5の音をブルー・ノートと呼ぶ。近代対斜の一種でもある。

Wikipedia

また、ジャズに関するレコード会社やライブハウス、クラブ等の名前には好んで「ブルー」が付けられています。

このようにブルー、青色はジャズを象徴する色として定着したとされています。

実際にジャズレコードのパッケージもブルーを基調にしたものが多くなっていますね。

ジャズを聞いてみよう! ~チェット・ベイカー特集~

今作の見どころ、いや聞きどころの一つ。数々のジャズの名曲が挿入歌として演奏されています。

「My Funny Valentine」

まずは、チェット・ベイカーの代表曲「My Funny Valentine」。甘い歌声にも注目です。

「Let’s get lost」

ドキュメンタリー映画のタイトルにもなった「Let’s get lost」。彼のトランペットをじっくり聞きたいならこの曲で決まり。

「Born to Be Blue」

そして今作のタイトルにも使われた「Born to Be Blue」です。

白人であるチェット・ベイカーが「ブルー」を象徴とするジャズを演奏する。この意味を噛みしめながら聞きたい名曲たちです。

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