映画界のポリティカル・コレクトネスはどこまで広がるのか?

ポリティカル・コレクトネスとは

ポリティカル・コレクトネス(英: political correctness、略称:PC、ポリコレ)とは、性別・人種・民族・宗教などに基づく差別・偏見を防ぐ目的で、政治的・社会的に公正・中立な言葉や表現を使用することを指す。

Wikipedia

1980年代にアメリカを中心に広まった言葉で、日本語にすると「政治的妥当性」や「政治的公正」という意味になります。近年、SNSの普及によってよく目にする言葉になりました。

映画界への波及

politicalは「政治的」と直訳されますが、ポリティカル・コレクトネスという言葉には「社会的」という意味合いも込められていることが多いように思います。さらに近年では飛躍して、文化・芸能分野にまで範囲を広げてきています。映画も例外ではありません。

ブラック・スプロイテーションや人種差別をテーマにした社会派映画を除いて、これまでの洋画は白人が主人公であることがほとんどでした。もちろん、ヒロインや親友、ライバルなども白人で固められています。

タイタニック

1997年に公開された『タイタニック』は、世界興行収入1位にもなった大ヒット映画です。タイタニック号沈没事件をテーマにした作品ですが、この映画には黒人・アジア人は一切登場していません。確かに当時の世相を考えると、乗客のほとんどは白人だったわけですが、黒人やアジア人も少数乗っており、しかも最後の生存者に何名か含まれています。また、タイタニック号以外のシーンでも、彼らの登場シーンはありませんでした。

『タイタニック』が珍しい作品というわけではなく、当時はこれが当たり前だったと思います。

ところが、近年の映画では黒人やアジア人のキャスティングが増え、しかも作品のなかで重要なポジションを占めることが多くなってきています。この傾向は特に大規模なスタジオで顕著です。

LONDON, ENGLAND – DECEMBER 13: Daisy Ridley (L) and John Boyega attend the ‘Star Wars: The Last Jedi’ photocall at Corinthia Hotel London on December 13, 2017 in London, England. (Photo by Dave J Hogan/Dave J Hogan/Getty Images)

2016年から製作された『スターウォーズ』新三部作。この作品では、シリーズで初めて女性が主人公となっており、発表当時はかなり話題を呼びました。さらに、コンビを組むのは黒人であるジョン・ボイエガ。宇宙を舞台にする『スターウォーズ』シリーズでは、これまでも多種多様な人種が登場していますが、今作のキャスティングはポリコレを相当意識しているように思えます。

スパイダーマン:ホームカミング

何度もリメイクされている『スパイダーマン』シリーズ。最新作である『スパイダーマン:ホームカミング』では、主人公の親友であり相棒であるネッドを、フィリピン系アメリカ人であるジェイコブ・バタロンが演じています。これまでのシリーズでは見られないキャスティングでした。

ゴーストバスターズ

80年代に世界各国で社会現象を巻き起こした『ゴーストバスターズ』は、2016年に主要キャスト4人を全員女性に代えてリブートされています。予告編には約90万件もの「低評価」が集まり、ハリウッド映画界の性差別を浮き彫りにしたとして、大きな波紋を呼びました。

賞レースにも影響が出始めています。

米アカデミー賞ノミネート作品をみると、ここ10年ほどで人種差別やマイノリティをテーマとする映画が急に増え始めました。2016年に作品賞を受賞した『それでも夜は明ける』は、自由黒人ソロモンが奴隷として扱われる映画であり、2018年の『グリーン・ブック』は、60年代のアメリカ南部を舞台に黒人ピアニストを描いた作品です。

また、2016年の『ムーンライト』や2019年の『パラサイト 半地下の家族』など、作り手側が黒人やアジア人であることも増えてきました。

ポリコレへの過度な傾倒は危ない?

全ての差別に配慮した最近の傾向は、一見素晴らしいように見えます。しかし、このような傾向は一部の映画ファンから疎まれている一面もあります。つまり賞レースにおいて、映画としての評価よりも、ポリコレへの配慮が勝ってしまっているのではないかと考えられているのです。本当に素晴らしい映画が、「ポリコレに配慮しているから評価されている」と思われてしまうのは、とても悲しいことですよね。

シリーズものである場合、作品がこれまで築き上げたイメージを壊してしまうという懸念もあります。

例えば、来年の「007」シリーズのジェームズ・ボンド役は黒人女性が演じることが決まっています。

ラシャーナ・リンチ – Roy Rochlin / Getty Images for Metro Goldwyn Mayer Pictures

アメリカ映画の名台詞ベスト100にも選ばれている「The name is Bond. James Bond」や、セクシーな女性とのラブシーンなどは、たしかにジェームズ・ボンドというブランドを形成していたのですが、今回の配役でそれらが崩壊してしまう可能性があるのです。

ポリコレはかなりデリケートなテーマです。映画という分野に、政治的・社会的な公平を求めるべきなのか。今一度考えてみる必要があると思います。

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