映画ムーブメント「ドグマ95」の純潔の誓いは意外とゆるいのかもしれない

数ある映画運動の中でも異質なムーブメント

これまで長い映画史のなかで様々な映画運動が起こってきましたが、そのほとんどは戦後の反体制的な作品を指すニューウェーブ系でした。例えばアメリカン・ニューシネマやヌーヴェルヴァーグなど。

これらの運動は世界中に飛び火し、数多くの名作を生み出しましたが、スティーブン・スピルバーグやジョージ・ルーカスらのハリウッド的娯楽映画が登場すると、途端に陰を潜めてしまいました。

その後しばらく大きなムーブメントは起こりませんでしたが、1995年にラース・フォン・トリアーが提唱した「ドグマ95」は、これまでの映画運動とは少し違った異質なものでした。

映画生誕100周年を祝うイベントで突然配られた赤いパンフレット。そこにはハリウッド大作映画を真っ向から否定する「純潔の誓い」が記されていました。このパフォーマンスは当時メディアで騒がれ、結果として世界中の映画人に伝わったのです。

「純潔の誓い」と呼ばれる10個のルール

ドグマ95の作品であることを定義づけるものは、「純潔の誓い」と呼ばれる10個の製作ルールを守らないといけません。

  1. 撮影はすべてロケーション撮影によるものでなくてはならない
  2. 現場以外での効果音を付け足してはならない
  3. カメラは手持ちのみ許される
  4. 光学合成やカラーフィルターを使用してはならない
  5. 表面的なアクションを描いてはならない
  6. 時間的・地理的な乖離は許されない
  7. ジャンル映画を禁止する
  8. 35mmフィルムで撮影する
  9. 監督の名前をクレジットしてはならない

このように、映画的な演出を制限してリアリティを追求しているのが特徴です。特に、「表面的なアクションを描いてはならない」と「時間的・地理的な乖離は許されない」というルールは、当時流行していたほとんどの映画では守ることのできないものです。

逆に、ドグマ95の作品であることを名乗ることに、技術的なハードルはほとんど無いということですね。

「純潔の誓い」は絶対ではない?

例えば、提唱者であるラース・フォン・トリアー自身が製作した『イディオッツ』は、ドグマ95の代表的作品とされていますが、がっつりBGMが付け足されているシーンがあります。

「純潔の誓い」の中でも、比較的ハードルの低いルールだと思いますが、一つ破ってまで演出したかったと考えると、意義深いシーンに思えます。

また、1998年にカンヌ国際映画祭 審査員賞を受賞した『セレブレーション』では、一部フィルター効果が使われていました。これは、かなり些細なものなので気づきづらいかもしれせんが、意図的なことは確かです。

しかも、こちらは公式HPによると登録第1号作品なんです。最初からルールを破ってるということになりますね・・・

その他の作品についても、ルール不適格である場合が所々あるので、「純潔の誓い」は必ずしも全てを守る必要はないようです。これらのルールはあくまでガイドラインであり、提唱されている映画製作への姿勢に沿うことこそが大切であるということでしょう。

なので、登録についても、実は厳正な審査や検証があるわけではなく、公式HPから申し込めば完了してしまいます。

ドグマ95公式サイトhttp://www.dogme95.dk/

「ドグマ95」のオススメ作品

もともと、監督作が高く評価されていたラース・フォン・トリアーが提唱したということで、賛同する映画人は多く、数多くの「ドグマ95」作品が製作されました。運動にピリオドが打たれた2008年時点で、およそ270作品が登録されています。

ただし、先にも述べた通り、登録にあたっての審査等がないので、内容がふさわしくない作品も含まれていると考えた方が良いかもしれません。

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