80~90年代にはセンスの光る秀逸な邦題が多い

批判されがちな無理矢理タイトル

邦題といえば、「どうしてこうなった?」と思われるようなタイトルを付けられることが多いようで、批判の的となってしまうことが少なくありません。たくさんの人に観てもらいたい映画と思ってもらうためには苦肉の策なのかもしれませんが、「ホントにこの映画観たの?」と首を傾げてしまうような邦題も結構あります。とくにアメリカ映画の原題は一語でシンプルなものが多く、そのままでは内容がさっぱり分からないので、色々付け加えられてしまうことが多い。

たとえば、アルフォンソ・キュアロン監督による2013年公開の映画「ゼロ・グラビティ」。まるで宇宙空間を体験しているようだと日本でも話題になったヒット作です。本作の原題は「Gravity」で直訳すると「重力」。邦題と正反対の意味になってしまうと当時の映画雑誌では評論家をかなり怒らせてしまいました。

地表から600キロメートルも離れた宇宙で、ミッションを遂行していたメディカルエンジニアのライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)とベテラン宇宙飛行士マット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)。すると、スペースシャトルが大破するという想定外の事故が発生し、二人は一本のロープでつながれたまま漆黒の無重力空間へと放り出される。地球に戻る交通手段であったスペースシャトルを失い、残された酸素も2時間分しかない絶望的な状況で、彼らは懸命に生還する方法を探っていく。

シネマトゥデイ 

ゼロ・グラビティ(吹替版)

また、ピクサーによる2009年のアニメ映画「カールじいさんの空飛ぶ家」も原題とのギャップが話題となった作品です。

いつか世界を旅して回りたいと思っていたカールも、今や78歳。最愛の妻は亡くなってしまい、夢をかなえるには年を取り過ぎている。しかし、何と数千の風船を家に結びつけ、空高く飛び立つことに成功。カールは8歳の少年ラッセルとともに冒険の旅へと出発する。

シネマトゥデイ

カールじいさんの空飛ぶ家 (吹替版)

こちらの原題は「Up」。子ども向けアニメにしてはあまりにもシンプルで、確かに印象に残るようなインパクトはありません。結果としてジブリ作品のような邦題を付けられてしまったわけです。

英語圏以外の映画はどうでしょうか。史上初めて非英語による作品でアカデミー作品賞を獲得した「パラサイト 半地下の家族」の原題は「기생충」。日本語に直訳して「パラサイト」なので、サブタイトルが付け加えられたパターンですね。

半地下住宅に住むキム一家は全員失業中で、日々の暮らしに困窮していた。ある日、たまたま長男のギウ(チェ・ウシク)が家庭教師の面接のため、IT企業のCEOを務めるパク氏の豪邸を訪ね、兄に続いて妹のギジョン(パク・ソダム)もその家に足を踏み入れる。

シネマトゥデイ

パラサイト 半地下の家族(吹替版)

ちなみに、米国では「Parasite」の作品名で公開されているので、おかしなタイトル訳問題はやっぱり日本特有なのかもしれません。

近年のヒット作は現代そのままが多い

ということで邦題のつけ方が問題視されてきた近年は、原題をそのままカタカナ表記する作品が増えてきた印象があります。

ブームが続いているスーパーヒーローものはほとんどが原題そのままです。また、アカデミー賞などの賞レースにノミネートされるような作品も同様です。子供向けやコメディ、ホラー映画等はまだまだ付け加えタイトルが多いですが、明らかに流れが変わってきた感があります。

アイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr)らアベンジャーズとサノス(ジョシュ・ブローリン)が戦った結果、全宇宙の生命は半数になってしまう。宇宙をさまよいながらスーツの開発を続けるアイアンマンをはじめ、生き残ったキャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)やソー(クリス・ヘムズワース)らは再び集まり、サノスへの逆襲を始める。

シネマトゥデイ

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー (吹替版)

少し時代を遡ると・・・

おかしなタイトル訳された邦題が批判され、原題そのままパターンが多くなっている近年ですが、時代を遡ると今の比ではないくらい改変されたタイトルがあふれています。

例えば、1967年代のアメリカ映画「Bonnie and Clyde」に付けられた邦題は「俺たちに明日はない」でした。のちにアメリカン・ニューシネマの先駆的作品として有名になる本作に対してピッタリなタイトルだと思います。

不況時代のアメリカ30年代に実在した男女二人組の強盗、ボニーとクライドの凄絶な生きざまを描いた、アメリカン・ニューシネマの先駆け的作品。ケチな自動車泥棒だったクライドは、気の強いウェイトレスの娘ボニーと運命的に出会い、コンビを組んで強盗をやりはじめる。二人は順調に犯行を重ねていくが……。アカデミー二部門を受賞(助演女優賞エステル・パーソンズと撮影賞)した。

allcinema ONLINE 

俺たちに明日はない (字幕版)

また、今なお多くのコアファンを有するスタンリー・キューブリックの意欲作「Dr. Strangelove」は、「博士の異常な愛情/または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」と訳されています。

巨匠キューブリックが近未来を舞台に、核による世界破滅を描いたブラック・コメディ。アメリカ軍基地の司令官が、ソ連の核基地の爆撃指令を発した。司令官の狂気を知った副官は、司令官を止めようとするが逆に監禁されてしまう。大統領は、ソ連と連絡を取って事態の収拾を図る。しかし、迎撃機によって無線を破壊された1機が、ついに目標に到達してしまう……。

allcinema ONLINE 

Dr. Strangeloveは劇中に出てくる博士の人名なんですが、これをまさかの博士の異常な愛情と訳した本作。キューブリックの意思にも沿った素晴らしいとタイトルです。

特に80~90年代がいい!

ダサい邦題があふれる近年ですが、原題よりも内容に即した素晴らしいタイトルも少なくありません。中でも80年代~90年代のハリウッド全盛期には秀逸な邦題がたくさんあると思います。

天使にラブソングを

ウーピー・ゴールドバーグの人気を不動の物にしたミュージック・コメディ。とある殺人現場を目撃したために、組織に命を狙われるようになった売れないクラブ歌手が、裁判の日まで修道院でかくまわれるハメに。しかし、元々下町で下品に育った彼女がそんなに神聖にできるはずもなく、やがて、聖歌隊をゴスペル風に改造し……。

allcinema ONLINE 

天使にラブ・ソングを・・・ (字幕版)

原題は「Sister Act」。直訳すると「修道女のパフォーマンス」といったところでしょうか。邦題にはどちらかというと欧米よりのインスピレーションを感じます。逆輸出したい良タイトルです。

死霊のはらわた

休暇を郊外で過ごそうと別荘を訪れた数人の男女が、そこで見つけた“死者の書”という奇妙な本とテープレコーダーに録音されていた呪文を紐解いたために邪悪な死霊が復活。次々と若者たちを血祭に上げていく。体裁はアマチュア映画なのだが、くどいまでの残酷描写、パワフルなショック演出とカメラワークによって世界中でたちまち話題となったB級ホラーの快作。

allcinema ONLINE 

死霊のはらわた (1983) (字幕版)

原題は「THE EVIL DEAD」。直訳は「邪悪な死者」で面白味のないタイトルですが、見事な邦題でこの作品の良さを引き出しています。

遊星からの物体X

氷の中から発見されたエイリアンと南極基地の隊員との死闘を描いた、SFホラーの古典「遊星よりの物体X」のリメイクで、よりキャンベルの原作に近い。10万年前に地球に飛来した謎の巨大UFOを発見した南極観測隊のノルウェー基地が全滅。やがてノルウェー隊の犬を媒介にしてアメリカ基地に未知の生命体が侵入した。それは次々と形態を変えながら隊員たちに襲いかかる……。

allcinema ONLINE 

遊星からの物体X (字幕版)

原題は「THE THING」です。B級スレスレなホラーSFを量産するジョン・カーペンター監督の作品です。その作風から邦題にはあまり恵まれていないイメージ(特に「ゴースト・ハンターズ」はひどすぎる)ですが、本作は唯一原作越えと言ってもよいでしょう。

ショーシャンクの空に

妻とその愛人を射殺したかどでショーシャンク刑務所送りとなった銀行家アンディ。初めは戸惑っていたが、やがて彼は自ら持つ不思議な魅力ですさんだ受刑者達の心を掴んでゆく。そして20年の歳月が流れた時、彼は冤罪を晴らす重要な証拠をつかむのだが……。

allcinema ONLINE 

ショーシャンクの空に(字幕版)

原題は「THE SHAWSHANK REDEMPTION」で直訳すると「ショーシャンクの買い戻し」。なんとも無機質なタイトルです。邦題からは大空を仰ぐ清々しいラストがイメージできるのでステキですね。

原題を超える邦題を付けて欲しい

名作には名タイトルがつけられていることが多いと思うのは私だけでしょうか。訳した方も作品のファンになったからこそ良い邦題が生まれている気がします。

要するに、作品の内容をきちんと理解して誠意のある翻訳をすれば、世間に批判されることもないはず。また、26字のアルファベットよりも日本語の方が豊かな表現が出来るのではないでしょうか?

昨今の風当たりに恐れることなく、素晴らしい邦題を生み出してくれるプロデューサーを心待ちにしています。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。